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2018.01.30

下肢の疾患

2-ⅰ-b.内反小趾 Minimus Varus

 
 
内反小趾 2

図1 内反小趾

 
内反小趾(ないはんしょうし)は、外反拇趾の小趾バージョンです。図1は西尾の右足です。小趾が捻転している状態で靴をしっかり履くようにしましたので、かれこれ20年以上、形状は変わっていません。
 
内反小趾

図2 内反小趾がひどくなると…

 
図2は内反小趾がひどくなると実際、このような形になります。これは内反小趾というよりTailor’s bunion(テーラーズバニオン)またはbunionette(バニオネット)と言います。
 
これは関節の隆起で、炎症が起こっている状態です。炎症が引けば痛みはなくなります。ただし隆起は凹みません。
 
外反拇趾の小趾バージョンです。外反拇趾で起こるメカニズムをそのまま小趾側で再現しています。
 
ですので、見た目が内反小趾だからと言って、原因は一つとは限りません。それが厄介なところなのです。内反小趾といっても少なくても5つの原因や疾患が考えられます。
 

  1. 機能的内反小趾
  2. 関節リウマチ
  3. 合わない靴を履き続けたために変形してしまった
  4. 遺伝性
  5. その他病気(糖尿病など)

 

1.機能的内反小趾とは?


 
機能的内反小趾とは、機能的に内反小趾になりやすい状態の足です。足の動きを細かく見ると、体重が乗っていない時と体重が乗った時では足の形は変わります。
 
 

図3 体重が乗っていない時の骨格

 
通常、体重が乗っていない時は図3のように足趾は綺麗にまっすぐです。土踏まずはちゃんとあり、関節は密接しています。
 
内反小趾になりやすい方で体重が乗ると、、、
 

図4 体重が乗っている時の骨格(関節がゆるい人など)

 
図4のように、足がベチャッと潰れるような形になります。足底の筋肉は5層あり、一番深い層は骨格を支える筋肉として働きます。表層になればなるほど力強くバネの働きをします。
 
内反小趾にならない人は深層の筋肉がしっかり働き、通常ここまで足は潰れません。大きな負荷がかかれば潰れますが、それでもバネのようにすぐ図3に元通りです。
 
アーチが潰れて元に戻りにくい人の土踏まずを押すと、筋肉特有の餅のような”弾力性”がありません。筋肉が伸びきっちゃって固くなってるんですね。
 
外反拇趾になりやすい方は、体重が乗っている間は図4の形にずっとなっている状態です。靱帯や筋肉が伸びきってしまい、元に戻る力が弱っているのです。
 
体重が乗っている状態をもう少し詳しく見てみましょう。すると、、、
矢状面内側_CKC 2.jpg

図5 荷重時の足部内側の様子

 
体重が乗って、土踏まずが潰れると足趾(足のゆび)は浮いてきます!これが踏ん張りの効かないメカニズムです。さらに、足の関節は密接にならず離れていきます。
 
図5は拇趾側なので、外反拇趾のメカニズムですが、内反小趾はこれが外側で起こるのです。カチッと歯車が噛み合っていない状態になるため、一個一個の骨がグラグラと動くようになります。骨格を支える力がないと、、、
新規ドキュメント 2018-01-30
 

図6 荷重時の足部正面からの様子

 
この動き自体は正常な人でもありますが、関節が緩くグニャグニャな方は図6の動き方が過剰です。歩いてて体重が乗っている間はずっと図6の状態が続いているのです
 
内反小趾は外反拇趾と同じメカニズムが外側で起こります。図6のようにスネが捻れ、第5中足骨は外側に転がるように捻じれます。そして第4と第5中足骨間が離れ、小趾の爪が外側を向くようになります。
 
この捻れの動きが過剰であれば、ヒールがあってもなくても、内反小趾になりうる可能性はとても高くなります
 
この捻れの動きが過剰な方は、『機能的内反小趾』と言えるでしょう。これは病気というより、日々の生活の積み重ねによりできた症状ですので、この過剰な動きを取り除く必要があります
 
そして内反小趾単独で起こることもありますが、今までウン千人という足を見させていただきましたが、8割ぐらいは外反拇趾と併発しています。
 
歩くとき、立っているとき、足が内側に倒れると外反母趾になりやすく、外側に倒れると内反小趾になりやすいです。
 
併発している方は、かかとが不安定で、グラグラっと内側・外側ともにグラつきます。足が潰れて、横ぶれがあると機能的外反母趾、または機能的内反小趾となりうるのです。
 

では、どうすればいいのですか?

 
靴やインソールで骨格を支えて、過剰な捻れを防ぎます。機能的外反拇趾または内反小趾の場合は、関節可動域があることがほとんどですので、靴内での足の収まり方を調整することができます。
 
 

図7 潰れた足を起こす方法一例

 
靴のカカト周りのカウンターが足を支えるぐらい固く、なおかつインソールでカカトを真っ直ぐに立たせます。
 

カカトを立たせることはなかなか難しいですが、靴を履くとき、履き口が広がらないように、靴紐をしっかり締めることが第一条件となります。
まずは靴をしっかり履く習慣を身につけなければ、インソール(中敷)を製作したり、足を計測して、ちゃんとサイズの合った靴を履いても、履き方を間違えたら何も効果を発揮しません。
靴の中でカカトをまっすぐに起こすことは技術を要しますので、「これって機能的内反小趾かな?」と思ったら、一度ご相談くださいませ^^

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2.関節リウマチ


 
関節リウマチは外反母趾とハンマートゥなど、内反小趾以外の足趾の変形を伴っている場合がほとんどです。関節リウマチは、関節を破壊して骨格を変形させる病気です。膠原病(こうげんびょう)の一種で、難病指定されています。
 

日本リウマチ財団によると、関節リウマチとは、免疫の異常により関節の腫れや痛みを起こし、その後、変形をきたす病気。主に手足の関節で起こるが、内臓にきたすこともある。

 
人口の0.4~0.5%、30歳以上の人口の1%にあたる方が、この病気にかかると言われています。どの年齢でも罹患する可能性はありますが、30?50歳代の発病する人が多く認められています。男性より女性の方が3倍多いのも特徴的です。
 
関節リウマチになる原因は未だ特定されていません。免疫系異常により病気が進行していることは知られているので、進行を遅らせたりすることはできるそうです。
 
関節リウマチを発症すると、手や足の関節の変形が現れてきます(初期の段階では全く変形が見当たらないこともありますが)。
 
関節リウマチ_足変形.jpg

図8 関節リウマチによる足趾の特徴的な変形

 
ある程度関節リウマチが進行すると、内反小趾でも特徴的な変形をします。関節リウマチは滑膜炎で関節を破壊しますので、関節が腫れるというのが特徴です。
 
その方の歩き方にもよりますが、外反拇趾+第2?4趾のハンマートゥ or 脱臼(または両方)+内反小趾 という足趾変形が見られることが多いです。
 
関節リウマチ_足変形_前額面

図9 第2、3趾の脱臼により高さが出た状態

 
第2?4趾がハンマートゥ、または脱臼をしていると、例えば図9のように”高さ”が出てきます。こうなると”一般的”な靴だと空間の広さや高さを出すような作りになっていないため、靴の内・外側、上が当たったりしますので、足と靴がなかなか合いません。
 
関節リウマチ_MPの腫れ

図10 関節リウマチの足底面

ハンマートゥ.jpg図11 横からの図

 
図10は足底面です。外反拇趾であれば足趾の機能が低下するため、足裏に胼胝(タコ)ができやすくなります。地面に接地しているときは、通常、足趾は真っ直ぐに伸びますが、足趾が変形すると、例えば図11のように、足趾は浮きっぱなしになります。
 
そうなると足底圧が分散されず、圧力が一点に集中し、痛みが出やすくなるのです。図10の足裏は胼胝にもなっていますが、この盛り上がり方は恐らく滑液包炎でしょう(医師でないため診断できません。悪しからず、、、)。
 
残念ながら、図10のようにエアーズロックのような盛り上がり方をした場合は、フットケアでは取り除くことはできません。
 
例えば、図10の方のような足の場合、できることは、、、

 
関節リウマチに限らず外反拇趾だと、どうしても足が骨ばった形になり、靴や地面には図11のように点で接することになり、圧力が一点に集中しやすくなります。
 
それを面で接するようにしたり、クッション材を全面に採用することで、足あたりを柔らかくすることができます。
 
ハンマートゥ_免荷方法一例.jpg

図12 足底面の免荷方法の一例

 
足底面は足裏の形状に合わせて採型します。これにより、圧力が点ではなく、面になります。全面クッション材を貼りますが、それでも圧力のかかるところは、摩擦を減らしたり、圧力を減らしたりする材料に、後日、変えることもできます。
 
関節リウマチの場合、関節をゴリゴリ動かすと関節の破壊が起こるため、靴の中での足の収まり方を変えることはできません。足の形状を変えないよう、硬めの靴とインソールを製作します。
 
現状を維持するよう、インソールで足底面を製作し、靴は全体的に固くても足趾の上や横は柔らかい素材のものをご提案させていただきます。
 
これは技術を要しますので、「関節リウマチで履ける靴は諦めてた…」「歩くことを諦めてた…」と思っていたら、一度ご相談くださいませ^^ もしかしたら、歩けるお手伝いができるかもしれません。
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3.合わない靴を履き続けたため


 
足と靴の形状、サイズなどが合っていない事で起こります。特に幼少期から合わない靴を履き続けると、骨格が歪みやすくなります。
 
このタイプの内反小趾は最も予防できる原因です。ドイツでは歩く前の幼児期から靴を履かせたり、”足検診”をしています。物心がつく前から足の変形を予防する活動をしています。
足検診イメージ.jpg

※足検診のイメージです

 
一人一人が知らず知らずにシューフィッターレベルの靴選びができるのです。歩くスピードはとても速いし、姿勢もしゃんとしています。
 
カップルで手を繋いでゆっくり歩くスピードではありません…西尾の本気の歩行スピードに匹敵するぐらいの速度です(ドイツの方々は歩くのが速かった…)。
 
2013年、ドイツの首都ベルリンに行ったときのことです。ベルリンは世界屈指の観光都市でもあり、主要な経済都市でもあります。ベルリン全域で590万人都市です。
 
仕事で外回りをしている方も多かったです。スーツや仕事着を着て出歩いている人たちが縦横無尽に歩いていました。そこで足元を見ると、ヒールものを履いている女性は10本の指で数えられるぐらいの数でした。
 
履いていたのはスニーカー、運動靴、おしゃれな革靴でも紐タイプでしっかり結んで、カカトをカパカパさせないようにしています。カパカパして歩いていたのは一人だけ確認しました。ドイツ人かどうかは不明ですが…?一般的に足の健康水準が高いと思いました。
 
ヒールを履いていても、歩くのは速いのです。足にピッタリ合っていて、足の機能が発揮されている状態であれば、ヒールを履いても何の問題はないのです

※ハイヒールスプリントの大会の様子の一部です。

 
足が機能すれば、ハイヒールでも全力疾走することができます。では、どのようにして”足に合う靴”を選ぶのでしょうか?靴選びの基準を把握していますか?そして、それを実践していますでしょうか?
 

靴選びのポイント

 
靴選びにはポイントがございます。

  1. 靴のカカトを支えるカウンターが固い
  2. 靴を捻じろうとしても捻れにくい
  3. インソールパターン内にほぼ足が収まる
  4. ゆび先には”捨て寸”がある
  5. 履き口に隙間がない
  6. カカトと甲で靴を履いている
  7. 足趾のところは窮屈感がない

 
靴の種類により若干異なりますが、基本的にはこれらのポイントは押さえる必要があります。靴を履くのに、こんなに注意をしなければならないの?!と思われるのですが、私は一握りでフィット感を判断します。
 
言葉にすると見る項目は多いのですが、一握りで判断できる内容です。微妙な時は一箇所ずつ見ることもあります。履いている時のフィット感と歩行状態の両方を確認して、調整の有無を判断します。
 
靴の履き方は一度覚えてしまえば、靴選びに困りにくくなります。直接、どのように靴を選べばいいのかを聞きたい!という方も大歓迎でございます^^
 
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4.遺伝性


 
両親や祖父母など先祖代々受け継いできた骨格により、内反小趾になりやすい状態です。機能的内反小趾とかぶるところはあります。
 
靴選びのポイントを押さえることで、内反小趾の重症度を軽減させることは可能です。しかし重症度を軽減させるとなると、幼少期から始めて、長い年月で実践するのが好ましいです。
 
現在、小学生低学年ほどの年代で、ご家族に外反拇趾になっている方がいらっしゃるのでしたら、そのお子様も内反小趾になる可能性が高いです。
 
今から足を計測し、足と靴を合わせた状態で、歩く、走るなどの運動をさせるようにしていきましょう。正しい骨格で運動をさせて筋肉のバランスを整えていきましょう。
 
お子様のインソールの調整も行なっております。「ウチの子供の足は大丈夫かしら?」「甥っ子、姪っ子の足の動きがなんか気になるのよね…」などなど、疑問を解消してまいります。
 

お子様の足もご相談ください^^

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mailアイコン ?support@fit-salon.com

 
 
大人になり、すでに内反小趾になっているから、、、といって、何を履いてもいいわけではありません。内反小趾に関わらず、足と靴が合わなければ、足本来の機能は低下してしまい、歩くのが困難になりかねません。
 
長い人生で、いつまでも自分の足で歩いてお出掛けができるように、FIT salonはお手伝いしてまいります。
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5.その他病気(糖尿病など)

 
その他の疾患により、内反小趾になることがあります。糖尿病は重症になると関節破壊が進み、足趾に関わらず、足部の変形をきたします。
 
 
糖尿病が重症化し、関節破壊が進んでいる場合、こちらは医療機関にご紹介させていただきます。軽度は要相談です。まずは一度御来店頂き、状態を見させてください。
 
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